Interview -高田 和徳 館長(御所野縄文公園)-
「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産のひとつとして世界文化遺産に登録される前から御所野縄文公園の館長をされ、世界遺産登録にも尽力した高田館長に、任意団体「縄文OneThird」の取組みについて直接伺いました。
この度はお時間いただきまして、誠にありがとうございます。 改めて世界遺産登録と無事一周年を迎えたこと、心よりお祝い申し上げます。 まずは当時のお気持ちからお伺いしたいと思います。
高田館長:こちらこそ、ありがとうございます。世界遺産に登録決定したときは、嬉しさよりも、ホッとした気持ちの方が強かったです。様々な困難がありましたが、周りの皆様の支えがあってできました。周りの皆様への責任を果たすことができて良かった。申請から登録までずっとプレッシャーを感じていましたが、登録されて本当に良かったです。
梅垣:そのような大変なご苦労を経験されながら、高田館長は一途に御所野遺跡の魅力を伝えていただきました。館長として世界遺産を目指すことになり、登録されました。次の課題はこれからどうやって盛り上げていくか?ですね。
館長:そうですね。世界遺産になっただけでは知名度向上以外あまり訴求しない。登録はあくまでスタートだと思っています。
私たちも世界遺産登録をスタートとして捉えて、どうやって活性化に繋げていくか思案する中、ふと北海道の「縄文燻製」という商品を新聞で見ました。そのような名物商品が作れないかと思い、町内の内澤商店さんを通じて岩手町の肉のふがねの府金さんを紹介していただき、どんどん人がつながっていき、「縄文OneThird」を設立させていただきました。弊団体への館長のご感想をお聞かせください。
館長:まさに、あくまで世界遺産登録はゴールではなくて、スタート。世界遺産に登録されてからあまり民間からの動きはなかったが、今回梅垣さんが中心となって作られた貴団体の活動はみんな大きな刺激になっていると思います。
梅垣:ありがとうございます。
私たちは主に食にスポットを当てた活動に取り組み、「縄文レストラン」などを公園内の縄文体験施設にて開催しました。御所野公園のスタッフの皆様、地元の飲食店、地域おこし協力隊、東京のシェフ、役場の方々にも多大なご協力いただきました。食に焦点を当てた縄文を通じた地域活性化についてはどのように感じられますか?
館長:コンセプトがしっかりしていれば、そして美味しければいいと思います(笑)。あとは季節感。縄文食の本質は季節感だと思います。現代社会は季節感なく食べるようになってしまいましたが、自然の季節の恵をいただくのが縄文をはじめとした日本古来の食の在り方。そこを大切にしてもらいたい。さらにいうと縄文時代でも全国各地域によって少しずつ植生が違う。地域の多様性も踏まえた上で、四季を大切にした食文化の活動を期待しています。
館長の目から見て御所野縄文公園に来られる観光客はどのような特徴を持った方が多いでしょうか。
館長:「縄文ファン」という感じの方が増えてきたように思います。つい最近出版社の編集者から聞いたのですが、他の世界遺産と比べると地味だがじわじわ浸透している感じだという感想を聞いた。これは社会の変化が縄文に向かっていて、縄文が体現していた世界観を理解したい方が引き寄せられている気がします。
縄文遺跡を巡るツアーにコンダクターとして同行したことがありますが、都会からの観光客と夜に飲食していた時、縄文のことをみんな熱心に質問してくる。その熱量は一過性のものではないことが伝わってきました。そんな方々が増えてきていると思います。
今後、一戸町においても縄文にちなんだ様々な取り組みがなされていくと考えられますが、町全体にはどのような期待をされていますか
館長:今回の縄文レストランはとても良い企画だったと思います。今回は初回だったので、町内外に発信するにはラグジュアリーさも必要なイベントであったかと思います。今後はそれに加えて、地元の食堂やレストランなどで、メニューの一つとして縄文にちなんだ自然の季節の恵を取り入れたものを普通に食べられるようになったら嬉しいです。
例えば葉っぱのお皿などを使ったちょっとおしゃれな感じや技巧を尽くした食事は東京でも楽しんでもらう。一戸では、日常的に体験できるメニューとして落とし込んだものが味わえるのが良いと思います。そういうことを求めて世界中からやってくる。地域の人たちには、地元の暮らしや食堂・レストランをしていることに誇りを持ってもらいたい。それが世界遺産になったことの本当のメリットだと思います。
最後に博物館の館長としてのお立場から、私たちや町民に対して期待することをお話いただけますか。
館長:縄文遺跡ということで復元した建物や土器などをたくさんの方に見てもらい、それはそれで意義のあることだが、それだけでは縄文の本当の意義が理解できないと思います。縄文の本質は自然との関わり方にある。すなわち里山にあると思っています。
御所野縄文遺跡は、縄文人が活動した結果作り上げた里山を復元し、それと触れ合いながら建物や土器も見られることに一番の魅力があると思っています。このような取り組みは、世界遺産登録となった他の縄文遺跡にはないこと。土器の紋様や時代にこだわるのも悪いことではないが、縄文文化の本質は自然との関わりにある思う。そのような視点で四季を通じて自然に常に関わることを期待します。
梅垣:今後、縄文OneThirdもそのような視点で事業、イベントを開催していきたいと思います。
館長:貴団体のみならず、どんどん町全体でそのような取り組みが広がってほしく切に願っています。これからも頑張ってください。
梅垣:ありがとうございます。これからも引き続きご指導いただければ幸いです。
本日は貴重なお時間をいただきまして誠にありがとうございました。